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「DIT」「録音部」が連携する、TC のワークフロー

30 May, 2017

GLADSAD staff がDITで参加した「ガチ星」「龍が如く 魂の詩。」「超 少年探偵団 NEO」等の長期間撮影の映画、ドラマで、Time Codeを利用した効率の良いワークフローを考え、実行しました。

最近聞かれる事が多いので、まとめてみました。

僕がレポートを得意でないのと、ワークフローは需要ありきと考えているので、最初から順番に、簡潔に説明していきます。

(用語の間違い、引用の間違い、多々あるかと思いますが、何卒ご容赦くださいませ。)

まず、ドラマ「ガチ星」(2016年公開)にDITとして参加することになり、打ち合わせをしていきました。

その際の、ワークフローに関する情報が下記になります。

・カメラはステディを多用する。

・撮影スケジュールが過密。カット数も多い。

・撮影と並行してオフライン作業を進めていく。

・オフライン、グレーディング、オンライン、MAのスケジュールが非常にタイト。

そこで考えたのが、下記でした。

・カメラをワイヤレスにして撮影部の動きを円滑にし、現場の効率を上げる。

・現場プレイバック用に、録音部の音をDITベースのQtakeに収録する。

・オフラインにカメラマイク音でなく、録音部の音を貼り付けて、撮影後のタイトな編集スケジュールに対応できるようにする。

オフラインの際にエディターが録音部の音貼りをする行程もありますが、カチンコのズレ(演出部、DIT、録音部のすれ違い)や、作業時間の割り振り、等々を考えると、新しいワークフローがないものかと。

そこで、DavinciResolveでCMの際に行っていた「Rawデータに音データを貼り付けるワーク」を利用しようと思いました。

DavinciResolveによる音データの貼り付けは2種類あります。

「映像と音をタイムコードでリンクさせての貼り付け」「音波形で貼り付け」

音波形での貼り付けになると、カメラマイクと現場の距離があり難しいです。

そこで本命のタイムコードの貼り付けですが、何故か上手くいかないこともあったので、検証してみました。

組み合わせのパターンで試したのは下記です。

・Camera Timecode OUT       ・Camera Timecode IN

・録音部のTimecode OUT        ・録音部のTimecode IN

・Timecode buddy 等の Timecode出力機のOUT

(ガチ星のカメラはAmira でしたので、REDも試しましたが、基本的にはAmiraを中心にテストしました。)

「ガチ星」の「録音部 増冨和音」さんにも、忙しいなかテストにかなり協力していただき、情報も提供していただきました。

そして、その中で一番上手く行ったのが

「 録音部のTimecode OUT(録音部設定のFreeRun) → cameraのTimecode IN (FreeRun)」でした。

(テストの検証結果は方法により差が出るかと思いますので、人によっては違う結果になる事もあるかと思います。)

その結果をもとに、現場でのワークフローを考え、増冨さんと話し合いました。

撮影前に構築したワークフローと、結果がほぼ一緒でしたので、現場での動きも組み合わせて下記します。

「DIT」「録音部」が連携する Timecode Work flow

camera : amira (cam mic)

Timecode : 23.976

DIT : 山口武志

audio mixer : sound device 788

DAW : pro tools

録音部 :  増冨和音

全体の流れ

1 朝、撮影部がセッティング中に、「録音部TC OUT」をBNCで「amira TC IN」に入力。JAMしたらBNCを外す。

2 カメラのsafeをONにし、Timecode情報をONにし、時折確認。

3 amiraのtimecode保持が8時間なので、昼と夕方にもJAM。

(電源をoffにしても、amiraにバッテリーを付けていれば、Timecodeは保持される。バッテリーを外した場合は10分しか保持されないので、その際は再度JAM。)

4 撮影終了後に、録音部が「Timecode付のwavファイル」をDIT or DMに渡す。

5 DIT or DM が、DavinciResolveで、オフラインデータ作成時に「Timecode付のwavファイル」をリンク。ズレがないか検証後、書き出し。(FreeRunなので、Binを分けて管理。)

6 オフラインエディターは録音部の音が既に貼られているオフラインデータで編集。

7 編集されている映像に、録音部の音ファイルが全チャンネル(1~16ch)リンクしており、MAの際にも音戻しをする事なく、作業。

簡単ではありますが、この様な流れになります。

クランクイン前に考えていた下記も、クリアできました。

・カメラをワイヤレスにして撮影部の動きを円滑にし、現場の効率を上げる。

・現場プレイバック用に、録音部の音を DITベースのQtakeに収録する。

・オフラインにカメラマイク音でなく、録音部の音を貼り付けて、撮影後のタイトなスケジュールに対応できるようにする。

撮影部、録音部、編集部のメリットだけではなく、金額的にもメリットがあるかと思い、乱雑ではありますがまとめてみました。

「ガチ星」「龍が如く 魂の詩。」「超 少年探偵団 NEO」では、3作品とも作品の効率アップをできたと思います。

…ただ、DITの作業時間は長くなります。

時間の短縮、金額の節約、にもなるので、DITに加えて、DMを入れる事を要検討した方がいいかと思いました。

今回のワークフローは「カメラの種類、バージョン」によっては、リンクしない事もあるかと思いますので、「撮影前のテスト、検証」が必ず行わなければなりません。

カメラによっては、突然タイムコードがリセットされたり、ズレるタイミングも変わってきますので。

保険として、下記の対策をしていました。

・音質よりも小ささを優先して、小型のカメラマイクを取り付ける。

(撮影部の邪魔にならないよう。)

・カメラによっては、DavinciResolveでリンクの際にカメラマイクのチャンネルを残す。

(音が数フレームずれていても、エディターが合わせやすい)

「テスト、検証」は2時間程度で終わると思いますし、僕と同じ様なケースがある場合には、DITと録音部で試していただけたら幸いです。

ワークフローが撮影を効率化し、作品のクオリティをあげる事ができれば、嬉しいです。

GLADSAD  DIT  山口武志


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